子供が精一杯泣くとき

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    かずさん


    生駒山上遊園地の帰り、皆がトイレへ行くと言うので
    私が一才になったばかりの男の子を連れて先に車に戻る事にした。
    それまで私に抱かれて大人しくしていたのだが、
    階段の途中から急に大声で泣き出して手がつけられなくなった。
    回りに人が居なくなり、見慣れない顔の人に抱かれて一人でいるのに気が付いて急に怖くなったのだろうか。
    よくこんな小さな身体からと驚く程の甲高くて太い声で、身を捩らせながら精一杯泣く。
    階段に一緒に座り込んで皆が来るまで待つより仕方なかった。


    泣かれながら、昔自分もこんな風に精一杯泣いた事を思い出した。

    3才位の事だったと思う。
    壬生川に高須という遠浅の海があり、叔父の知り合いに潮干狩りに連れて行って貰った。
    貝を求めてかなり沖まで行ったのだと思う。
    やがて潮が満ちてきた。
    オジサンは貝を入れる袋を取って来るからと私を残して岸へ戻って行った。

    夕方に出かけたので、回りにいた人達は皆帰ったのか誰もいない。
    満ちてくると潮位の上がるのは早い。
    見る間に踝から下が水面に隠れた。
    後から後からひたひたと波が押し寄せて来る。

    広い海に独りぽっちでいる!

    急に怖くなって大声で泣いた。
    オジサンはなかなか帰って来ない。
    一層声を張り上げて精一杯に泣いた。


    ようやくオジサンが引き返して来てくれて、袋の代わりに自分のシャツを脱いで貝を入れた。


    この子もあの時の私と同じような恐怖に襲われたのだろうか。



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